※兄弟パロ






 俺とシズちゃんの付き合いは、胎児の時からと言っても過言ではない。同じ母の腹部に同じ時期、同じ時間だけ共に過ごしていた(流石に生まれる時、僅かな差は生じているが)。俺とシズちゃんは、俗に言う双子である。
 どちらが兄なのかは、はっきりさせていない。事実上は俺の方が早く生まれたらしいのだが、シズちゃんは「俺が兄だ」の一点張り。始めこそ、お互いに張り合って無謀な争いをしていたのだが、今は譲歩してシズちゃんを兄としてあげている。心中には、俺が兄だという事実が揺らぎなく存在しているが。
 そんな自分とその半身だが、実際、性格も顔つきも全く違う。二卵性双生児だから有りがちな話ではあるが、兄弟であるかどうかも疑わしいほど、俺とシズちゃんは似ていなかった。初対面で兄弟と判断されることは少ない。仲の良い友人同士として認識されるものだから、事実を伝えると大抵の人は驚いた。大人に伝えると、余程信じられないのか、養子縁組しただとか、腹違いだとか頭の悪い噂が流れたものだが、正真正銘の兄弟だ。
 似ていないからというのは不十分な理由だ。しかし、そう思われるのも頷ける理由がある。
 俺とシズちゃんは、兄弟というよりも、恋人に近いそれがあった。
 名前を呼ばれて、キスをされたのが初めて。何が発端なのかは覚えていないが、確か、シズちゃんが初めて他人と喧嘩をしたときだった。当時、自分の兄弟がそんな行動を取って人の温もりを求めることにショックを受けた。しかし、それは自分の兄を慰める唯一の方法かもしれないのだ、と今は妥協している。俺はシズちゃんに、異性のような何かを特に感じはしないが。ただ、それが(名目上だが)弟の役目なのだと思っている。
`以来、人目を盗んでは、何度もキスをしていた。
「シズちゃん、ここ、学校だよ」
 苦痛に顔を歪めたシズちゃんが、鼻が付く程近くにいる。ちゅ、と耳にへばり付くように唇が鳴った。元々学校では何もしないというルールを作ったのはシズちゃんだ(それよりも酷い兄弟愛なんてものを築いているが)。
 シズちゃんは、その馬鹿力のせいで、他人と仲を保てない。彼自身は努力しているものの、相手が寄り付かなくなるのが殆どだ。その度に傷付いては、俺に慰めを求める。そうするなら誰かと関わるのは止めて、俺だけにすればいいのに。
 幼い頃から側で見てきたからこそ、シズちゃんに的確な慰めを与えることが出来た。それに甘えるシズちゃんに、甘える自分がいることを否定出来ない。そして、他人との関係を築く行為を止めさせることが出来ないのは、他でもない俺なのだが。
「いいから」
 普段よりも切羽詰まったシズちゃんの唇が、俺の唇と触れる。糸を引く唾液が光に反射して、はっきりと途切れるのを見た。
 こんなとき、シズちゃんを止める訳にはいかない。弟として何が出来るのか考えた結果、ただ目を閉じることにした。


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